一般人のためのプリュッカー座標系 パート2

このブログポストは、Lionel Brits氏のPlücker Coordinates for the Rest of Us - Part 2(2001)を、原著者の許可を得て翻訳・公開したものです。全ての権利は、原著者にあります。


何が直線にとって固有のものなのか

前章では、座標幾何学の良く知られている部分の説明に留まり、プリュッカー座標系の何がうれしいのかについてまで踏み込まなかった。心配は御無用。その点について今から踏みこんでいく。再度、向き$$w$$について見てみよう。

$$w=(\vec{U}\times\vec{Q})\cdot\vec{V}-(\vec{U}\times\vec{P})\cdot\vec{V}$$

$$\vec{U}\times\vec{P}$$は直線$$\vec{Q}(t)$$から独立だということに気がつくだろう。$$\vec{U}\times\vec{P}$$は直線$$\vec{P}(t)$$に固有のものだ。また$$\vec{P}(t)$$の方向$$\vec{U}$$も$$\vec{P}(t)$$に固有のものだ。しかし$$\vec{P}(t)$$上の任意の点を$$\vec{P}$$として選択できるので、$$\vec{P}$$は$$\vec{P}(t)$$の固有のものとはみなせない。

プリュッカー座標系にようこそ!

プリュッカー空間

何が直線にとって固有のものなのかわかったので、$$\vec{U}$$と$$\vec{U}\times\vec{P}$$を使って、直線の相対的な向きをかんたんに表現する系に変換することができる。この系は六次元プリュッカー空間と呼ばれる。三次元空間で向きを持つ直線は、プリュッカー空間では六次元の座標となる。$$\vec{P}$$を通り$$\vec{U}$$との何かの積が方向である全ての直線を、六次元の斉次座標系では等価と扱う(六次元の斉次座標系は五次元の非斉次座標系の点となる)。これでプリュッカー座標$$L$$を定義することができるようになった。$$\vec{P}$$を通り$$\vec{U}$$を向く直線は次のようになる。

$$L={\vec{U}:\vec{U}\times\vec{P}}$$

$$\vec{P}$$から$$\vec{S}$$に向かう直線も、$$\vec{U}=\vec{S}-\vec{P}$$と変換することで、プリュッカー座標を得る事ができる。

$$L={\vec{U}:(\vec{S}-\vec{P})\times\vec{P}}$$

これは次の式と等しい。

$$L={\vec{U}:\vec{S}\times\vec{P}}$$

置換された内積

二つの直線$$\vec{P}(t)$$と$$\vec{Q}(t)$$の関係に戻ろう。それぞれのプリュッカー表現はそれぞれ$$L_p={\vec{U}:\vec{U}\times\vec{P}}$$と$$L_q={\vec{V}:\vec{V}\times\vec{Q}}$$になる。

$$\vec{P}(t)$$から見た$$\vec{Q}(t)$$の$$w$$は次のようになる。

$$w=(\vec{U}\times\vec{Q})\cdot\vec{V}-(\vec{U}\times\vec{P})\cdot\vec{V}$$

ベクトル積の重要な性質は、$$(\vec{U}\times\vec{Q})\cdot\vec{V}=(\vec{Q}\times\vec{V})\cdot\vec{U}$$であることだ。これを使って変形すると、

$$w=(\vec{Q}\times\vec{V})\cdot\vec{U}-(\vec{U}\times\vec{P})\cdot\vec{V}$$

この中に対称性を見いだせたら賢い。確かに、$$\vec{Q}\times\vec{V}=-\vec{V}\times\vec{Q}$$を使うことで次のように変形できる。

$$w=-(\vec{V}\times\vec{Q})\cdot\vec{U}-(\vec{U}\times\vec{P})\cdot\vec{V}$$

$$\omega=-w$$と定義することで、この式の中のマイナスを取り除ける。

$$\omega=(\vec{V}\times\vec{Q})\cdot\vec{U}+(\vec{U}\times\vec{P})\cdot\vec{V}$$

これは実は二つの交換されたプリュッカー座標の内積なのだ。$$L={\vec{U}:\vec{U}\times\vec{P}}$$を$$L={\vec{U_1}:\vec{U_2}}$$のように書きなおすと、直線$$\vec{U}(t)$$と$$\vec{V}(t)$$の座標表現は$$L_U={\vec{U_1}:\vec{U_2}}$$と$$L_V={\vec{V_1}:\vec{V_2}}$$になる。これを使って$$\omega$$を表現すると次のようになる。

$$\omega=L_U \ast L_U = \vec{U_1} \cdot \vec{V_2} + \vec{U_2} \cdot \vec{V_1} $$


これで二つの直線の相対方向を$$\omega$$を使ってまとめることができる。$$\omega$$は$$w$$の正負をいれかえたものであることを思い出そう。

$$\omega > 0$$の場合。$$U(t)$$と$$V(t)$$は互いが反時計方向にまわって見える。

$$\omega < 0$$の場合。$$U(t)$$と$$V(t)$$は互いが時計方向にまわって見える。

$$\omega = 0$$の場合。$$U(t)$$と$$V(t)$$は交差しているか、平行か反対方向の平行か、またはそれらの両方か。

ところでどこに向かってるの?

“ここまでの話は単に式を展開してきただけなのでは?”という声が聞こえそうだが、それは仕方のないことだ。驚いたことにまだ二章しか進んでいないのだが、すぐにでも強力な武器を手に入れたいようだ。もし勇気があるなら、次の章に行ってみよう。


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